ワイワイブログ

畢竟独自の見解

立川ビラ判決蟻川連載メモ

突然ですが、皆さんは「「公法訴訟」論の可能性(1)(2)」(法教No.391-392)をお読みになったでしょうか?わたしは二週に一回のペースで読み直しています。読んだことがない人は深く反省し、なるべく早く読んでください。なぜなら最高なので。

内容はと言えば、神・ヤハウェ・御大でお馴染みのNKGW先生が「適用違憲三類型」をボロカスにいう話なんですけど・・・

 

ところで最近蟻川先生の法教連載を読み始めたんですけど、途中で立川ビラ判決についてわからない箇所があったのでメモがてら公開の場に付して教えを請いたいと思います。パブリックフォーラム。

 

連載第二回「立川ビラ事件最高裁判決を読む」中での蟻川先生による平成20年4月11日判決(百選Ⅰ63)の構造解析がなされている場面です。

当該事件は憲法21条と刑法130条の相剋が顕在化したものですが~…いや詳しい内容は各自見ていただくとして、ここで具体的に検討の対象となっている説示を切り取ってみます。

「…本件では、表現そのものを処罰することの憲法適合性が問われているのではなく、表現の手段すなわちビラの配布のために『人の監守する邸宅』に管理権者の承諾なく立ち入ったことを処罰することの憲法適合性が問われている…」

この説示を梃子に蟻川先生は本判決に以下のような憲法論上の意義を見ます。(アンダーラインはワイによる)

すなわち、「…憲法適合性の「判断枠組み」を「行為を禁止することの許容性(合憲性)」と「刑事罰を科すことの許容性(合憲性)」というふたつの「部分」にーーこの順でーー分節したことは、大きく、三つの憲法論上の意義を持つといえる。…」

①「…違憲論の対象(「行為を禁止すること」)を、国会が広範な立法裁量を有する「刑事罰を科すことの合憲性判断から切り離すことによって、違憲主張が成り立つための基盤を最低限保守する意義を持った…」

②「…本件の憲法論を「行為を禁止すること」の許容性として定式化することによって、それ自体としては、民事事件・行政事件・刑事事件という事件種別に関わらない憲法論のトポス(場)を確保することに成功した…表現をするための立ち入りであることが「正当な理由」がなくという構成要件に当たらないとか「正当行為」という違法阻却事由に当たるとか言えるのでなければ犯罪を憲法論によって不成立にすることができないとすれば、表現目的での住居等への立ち入りの違法性に関する一定程度定型的な判断が先行していることが必要と解されるが、そのような判断は必ずしも蓄積されていないうえ、先述した「不当に害する」の要件に該当するか否かは性質上それぞれの事案ごとのそのつど具体的な利益衡量によって決するほかはないというのが1984年判決の伊藤補足意見が示すところである。それでも構成要件非該当ー違法阻却ー責任阻却のいずれかの局面に嵌め込むのでなければならないとしたら、違憲論に場所はない。翻って、構成要件非該当ー違法阻却―責任阻却のいずれの局面とも別に利益衡量を展開しうる議論位相がないとしたら、違憲論に見込みはない。上記分節は、この議論位相を用意したのである。」

③「…一方で、刑法130条に関する法令違憲の要素を違憲論の主たるトポス(「行為を禁止すること」の違憲)から除外するとともに、他方で、そのトポスを刑法130条に関する適用違憲の要素からも防衛することによって、先にも見たように、「法令」のうちに如何なる意味でも違憲の瑕疵を含まない(従って、法令違憲のみならず厳密な意味では適用違憲もありえない刑法130条それ自体を救済しつつ違憲論を展開する法論理的可能性を開拓した…」

 素朴な疑問以下殴り書き。

①そもそもそのような分節は可能?刑法130条はそれによってある種の行為類型の束を規定し、そのような行為をまとめてー刑罰による威嚇を以てー禁止している。そのような同条を「行為を禁止すること」と「刑事罰を科すこと」に分割することは果たして可能か。前者単独では「禁止」の意味が問題になりえそうだし、後者単独では客体が不存在である。後者については「刑事罰を科すこと」を規定した法令を対象としているのではなく、-刑法論でいうところの処罰阻却事由的な意味でのー行政庁による処分を対象としている議論なのかとも思った(としても罪刑法定主義が問題になるけど)けど、蟻川先生の分析を見ると「…国会が広範な立法裁量を有する刑事罰を科すこと」の合憲性判断から…」となっておりやはり対象は法令とみるべきなのだろうけど...

憲法ー法律ー条令のような法の段階的構造把握を放棄したことにはならない?つまり、刑事裁判において構成要件ー違法性ー責任の枠組みから独立して違憲論を主張することに文字通り何の意味があるのだろう?(違憲となった場合の法効果は何?)憲法適合的解釈は?

③「法令」のうちにはいかなる意味でも違憲の瑕疵が存在しないのであれば、ー一部の例外を除きーあとは当該処分の解釈適用の違法が残るにすぎなくなるのでは?(そうでなければ端的に罪刑法定主義違反)(「「公法訴訟」論の可能性」NKGW発言CHECK IT OUT)

 

 

まあ生意気に言ってますけど完全にあほな疑問な気がする。てか単純に読み間違いしてる気。やばい。炎上したくない。

ともあれ、この投稿でワイが言いたかったことは、蟻川法教連載は最高だということと、全員「公法訴訟」論の可能性を読めということです。~happy end~