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畢竟独自の見解

蟻川恒正『尊厳と身分』かっこいい文章紹介

え~こんにちは。今回は蟻川恒正『尊厳と身分‐憲法的思惟と「日本」という問題‐』がいかに最高であるかについてレビューしようかと思ったのですが、めんどくさくなってしまったのでやめます。

 

ところで蟻川先生は『憲法的思惟‐アメリカ憲法における「自然」と「知識」‐』という修論?助手論?も以前出版しておりまして、この『尊厳と身分』と一緒に復刊されるまではえげつないプレミアがついてたんですよね(密林で三万くらい)。

わいは地元の本屋にてこのプレミア版の憲法的思惟を見つけ定価で即買い、すぐさまツイッターの人に1万円で売りさばくという最悪なことをしたことがあります。尊厳も身分もあったもんじゃないですね。よろしくお願いします。

 

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尊厳と身分――憲法的思惟と「日本」という問題

尊厳と身分――憲法的思惟と「日本」という問題

 

 

 「個人の尊厳」をテーマとする12本の論考が収録されているのですが、一通り読んだところ一番好きだったやつは『「命令」と「強制」の間‐最高裁判例に潜在する「個人の尊厳」‐』です。これは謝罪広告判決の入江意見にフォーカスしたものですので、みなさんにおかれましては判決原文をお手元にご用意いただければと思います。

今回は上記論考内でハチャメチャにかっこいい文章を発見したので、それを皆さんに紹介したいと思った次第です。若干長いですが以下に引用します。

 入江意見は、「良心による倫理的判断」という語、あるいは、「倫理的判断」ないし「倫理的の判断」の語を繰り返し使用しているが、それらの後に入江裁判官が託した意味は、「匹夫の志」の警句が象徴する通り、誰も奪うことができないものであるということである。その窮極の含意は、当該個人当人によってもそれは奪うことができないという点にある。

 自分を誤魔化すことが、ときに、人にはある。自らの良心を偽る瞬間といってもよい。それを入江意見は許さないのである。

 入江意見は、被告人(上告人)に謝罪広告を命ずる「本件判決は上告人の任意の履行をまつ外は、その内容を実現させることのできないもの」であると言い、「従つて上告人は本件判決により強制的に謝罪広告を新聞紙へ掲載せしめられることにはならない」と言う。これは、裁判所の判決を受けた被告が判決に従わなくともよく、実際、従わないことができるということである。だが、「個人が善悪について何ら感も倫理的判断を内心に抱懐している」場合には、自らの判断に反する判断を表明するよう国家から命じられても従う必要はないとする入江意見の意味するところは、もっと根源的である。入江意見に直截の言明はないけれども、そのような場合には判決に従ってはいけないというまでの底意が窺われるのである。誰にも奪うことのできない「良心による倫理的判断」である限り、当人自身によってもそれを奪うことはできないということを、入江裁判官は、誰よりも自覚していたと思われる。そうである以上、事は、単に判決による命令に従わなくともよいということではない。判決に抗する覚悟があるや否やが問われているのである。その覚悟のない者は、心ならずも判決の命令に屈することになるとしても、「強制」執行が予定されないとされる以上、被告は「自発」的に謝罪したという効果が発生することに耐えなければならない。「自発」的謝罪であるのだから、謝罪広告を命じても違憲でないのは当然であろう。

 入江裁判官のこのような構想は、何に起因するものであろうか。私が思うに、それは、「良心による倫理的判断」に関しては、たとえ国家が個人に対し命令をもって自ら(国家)に従うよう求めてきた場合であっても、最後的責任を負うのはどこまでも当の個人でなければならないとする峻烈な信念である。…(p221~223)

 内容については論文を実際に全部読んでもらうとして、わいのおすすめポイントを紹介します。

「自分を誤魔化すことが、ときに、人にはある。」←これ

読点、読点の使い方が…なんてかっこいい…

特に、二つめの読点ですね。

「自分を誤魔化すことが、ときに人にはある。」

でもまあ文章としてはいいですし、

「ときに、自分を誤魔化すことが人にはある。」

でもいいでしょう。でもかっこよさポイントは大幅にダウンしてしまいます。

そうではなく、「自分を誤魔化すことが、ときに、人にはある。」これですよ。

これから蟻川先生のことは読点の魔術師と呼んでいきたいと思います。

 

 

いや、ちょっとまってくれ、いま気付いたのですが、これは読点の使い方ではなく、「ときに」の使い方なのではないだろうか。英語で言うsometimesですか。あ~~~そうやな、英語的挿入方法やな、これはそうやな、あれ、英語でよく意味わからんと思っているhoweverを間に挟むやつでんがな。

 

ともあれ、みなさんもぜひ、本書を手に取ってみてください。おすすめです。

 

サムタイムズ蟻川