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畢竟独自の見解

井田良『講義刑法学各論』宇宙最速レビュー

え~みなさん、お元気でしょうか。わたしは非常に元気です。

なぜならついに(学部二年のころから四年ほど待った)敬愛する井田先生の『講義刑法学各論』をゲットすることができたからです。東京ではおととい?くらいから流通開始したようで、わたしも喜び勇んで昨日学校の生協に行ったらおいてなく、月曜入荷と聞いて「これが首都圏の暴力…」と怨嗟の念を持っておりました。

ロー生イチの井田刑法学ファン(当社調べ)のわたしとしてはいてもたってもいられなかったので、ルミナリエ?とかいうのに向かうカスみたいな人の波をひとり押し分け三宮のジュンク堂に向かい、見事手に入れることができました。ジュンク堂、有能。

 

講義刑法学・各論

講義刑法学・各論

 

 え~それでは宇宙最速レビューをしていきたいと思います(クソ流し読み)。

まず何といってもこの帯のことば、かっこいいですよね。「何のための刑法か。」この問いに対しては、わたしほどのファンともなると

このように、即座に井田先生が言いそうな解答を導き出すことができます。なお、これは畢竟独自の見解ですので、批判・異論は受け付けません。

 

はしがきにおいて印象的なのは、「本書は(誰だってときには訪れたくなる)ファーストフード店ではなく、親元を離れてひとり住まいをする学生に基本的には毎日通ってほしい(料理の腕前はいまひとつで、ときに勘違いもするが、学生の身体と健康のことを第一に考えている、ハートだけは熱いオヤジがいる)定食屋のような存在でありたい。」という文章です。

この文章を読むと、「あ~井田先生、ツイッターでよくマック行く感じ出してるしな」「ファストフードではなくファーストフードと書くのは好印象」「結局よくわからん」という感想が頭を駆け巡りました。同時に、井田先生のチャーミングさを十二分に感じることができ、よかったです(小学生並みの感想)。

また、はしがきでは要約すると「総論では攻めすぎたから、各論は自重するね☆」と書いていたので、わたしとしては「オイオイ…やめてクレメンス…」と不安になったのですが、内容を見るとその不安は杞憂に終わったようです。

 

宇宙最速レビューを目指すためマジ流し読みしかしていないのですが、感動したのはその形式面にあります(はよ内容に入れ)。というのは、中身のデザイン?スタイル?が総論と一緒で、非常に格調高く、見やすいのです。わたしは総論のデザインが非常に好きで、各論でもそのなじみのあるデザインが継承されていてよかったです。

あと、形式面でいえば、井田総論は脚注が非常に充実しているという特徴があり(当社調べ)、各論でも類を見ない脚注の充実度となっています。リファーされている文献は基本書にとどまらず、島田法教連載や(ここでわたしは号泣)法学以外の人文書、そして薮中助教が2015年に提出した博士論文!(p50脚注17)と多岐にわたります。これはすごい。

 

肝心の内容ですが、わたしが気になって真っ先にみたのは「盗品等に関する罪(p327~)」です。井田先生の黄色い各論では物的庇護説をとることが明示されていなかったのですが、本書では物的庇護説を全面に押し出しており、物的庇護説を提唱された井田先生の論文に感動を覚えたことのあるわたしはメチャ興奮しました(クソキモい)。

ただ、はしがきにもあったように各論は自重し学習の便宜を図るということにも配慮されており、通説・判例の解説も厚く、独自色を出す箇所は分離されているので混乱することはないと思います(判例のリファーもめっちゃおおいと感じました)。

ほかに流し読みした段階でおもしろいなあと思った場所は、自殺関与罪の説明での「有効な同意の限界と殺人の実行行為性の限界とは一致すると考えなくてはならない。」(p36脚注29)とされている箇所と、性的自由に関する罪の説明での「身体的内密領域を侵害しようとする性的行為からの防御権という意味での性的自己決定権」(p106)とされている箇所です(ここでは性的自由に関する罪の説明での~…と書きましたが、実際には「第1編第1部第5章身体的内密領域に対する罪」という章立てになっています!)。

井田先生はたしか最近出たなんかの記念論文集で殺人罪自殺関与罪の区別についての論文を書かれていたような気がしますが(うろ覚えかつ未確認)、この見解にかんすることなんでしょうか。まあいいや。

 

とりあえずのレビューはこんなもんでしょうか。詳しく突っ込んだレビューはまた今度したいと思います。

ともあれ、総括としましては充実かつ重厚な基本書に仕上がっているという印象で、全国のロースクール生はその手に持っている基本刑法の代わりに本書を買うと良いと思います。

 

それではさいごに、オモロイと思った箇所を引用して終わりたいと思います。

爆発物取締罰則 爆取(バクトリ)と略して呼ばれることもある。(p370)