ワイワイブログ

畢竟独自の見解

小川亮『裁判所法四九条のいう「品位を辱める行状」と裁判官による裁判に関する表現行為〔最高裁平成30.10.17決定〕』の(簡単な)ご紹介

え〜〜〜〜〜ご無沙汰しております(ツイッターはしてる)。

 

岡口Jの弾劾裁判が開かれることになったようで,界隈がざわついております。

www.asahi.com


ワイはそこまで興味しんしんで一連の流れを追ってきていたわけではないんだけれども,まあ界隈の意見はツイッター見てたら目に入ってくるし,キムソーセンセとかキノピーセンセの意見書は一応読んどくか,っていうような感じでした。

読んだ意見書は(被申立人から提出されるものであるから当然ながら)戒告処分には反対,違憲であるという内容で,管見の限りでは界隈でもそれに同調する人が多いんでないかなと思うんだけど,個人的にはどうも腑に落ちておらず,とはいえ自分の考えをちゃんと整理するだけの時間をとるわけでもなく,なんとなく大勢の意見にはノリ切れないから黙っていよう,というスタンスでありました。

 

もっとこうワイの違和感を明確化してくれるような書き物はないものか・・・とは感じていて,標題の論文はおそらくそうなのではないかなという事前情報はかなり前にキャッチしていたところではあったのですが,いかんせん載っている媒体が自治研究なもので,これがなんともアクセスしづらい。まあいいやと思って数年ほっておいていたのですが,今回のニュースがあったことで,その存在を思い出し,やっとのこと読んでみたのでした(小川先生ありがとうございました。)。大変勉強になりました。小川先生って法哲学者じゃなかったんですね(たぶん)。

ci.nii.ac.jp

 

一読した上でワイが「いいな」と思ったところは,以下の点です(小並)。議論の流れ的なところはめんどくさいので紹介しませんが・・・

・「同条にいう『品位を辱める行状』とは、職務上の行為であると、純然たる私的行為であるとを問わず、およそ裁判官に対する国民の信頼を損ね、又は裁判の公正を疑わせるような言動をいうもの…」という判示における「裁判官に対する国民の信頼を損ね、又は裁判の公正を疑わせるような言動をいう」の解釈として独立説は妥当ではなく,「裁判の公正を疑わせる」かどうかが要件該当性判断にとって決定的であるとの指摘

・問題とされるツイートに対する「一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方」がどのようなものであるかについて,「裁判所の認定を批判するためには,裁判所が従うべき規範からすればこのような認定を行うべきではない,という主張を行う必要がある(例えば,適切な方法による社会調査に依ることが考えられる)。」との(ある種当たり前の)指摘

 

このほか,懲戒事由該当性判断と懲戒処分相当性判断は切り分けられており,取り上げられるツイートの範囲も当然ながら異なるという(これもまたある種当たり前の)指摘も,判例評釈としての明晰性を実感するものです。

 

結局のところ,裁判所法49条それ自体についての違憲性を問題とせずに,本件戒告処分には反対である,違憲であるというような主張をすることがワイは気に食わなかったんだなあという従来からの私見に落ち着いたのでした。

 

ともあれ,本評釈は,意識的に読もうとしないとなかなか読むことはないのではないかなと思いますが,取り上げている裁判について肯定的な立場ということもありますし,界隈のみなさまには広く読まれてしかるべき論文であると思料するところです。

 

なお,本評釈が取り上げている裁判については肯定派ですが,それと今回の弾劾裁判の是非についてはまた別論であることは言わずもがなです。上記朝日新聞の記事にありますが,本評釈の対象となっている裁判で問題となっているツイート行為は,弾劾裁判の罷免事由該当性判断の対象ではないはずですしね。

 

〜完〜