ワイワイブログ

畢竟独自の見解

写真撮影は「検証」か?

刑訴の話です。興味ない方はお帰りください。

 

また、書く前にすでにめんどくさくなってきたので、下調べや教科書等のリファー、条文摘示は極力なしでいこうかと思います。

また、当然ですが、強制処分たる性質を有さない写真撮影も事案との関係ではあるかと思いますが、以下で想定しているのは強制処分たる性質を有する写真撮影のみですのであしからず。(なお、以下での論述に関わりますが、細かいが本当は「強制処分たる性質を有する写真撮影」ではなく「強制処分性が問題となるような態様で行われる写真撮影」と書きたい)

 

 

写真撮影は「検証」か?という質問に対し、(「押収」の場合や「捜索」の場合もある、という返答をするちょっとめんどくさい人を除けば)YESと答える方はそれなりに多いのではないかと思います(わたくし調べ)。

 

しかし、これはワイの持論なのですが(それゆえ畢竟独自の見解なのですが)、写真撮影は「検証」ではない、と言いたい(かってにしろ)。

 

 

司法試験との関係で有名なのは、捜索差押に伴う写真撮影の可否でしょうか。

まず、その論点では強制処分法定主義が問題となっているのか、それとも令状主義が問題となっているのか、どっちなんでしょうか。(司法試験受験後と思えない問い)

 

令状主義の問題であると答える場合、論理的にいって強制処分法定主義は問題にならない、それはクリアしていると答えることになるのかと思います。

そして、少なくない方々は、これは令状主義の問題である、と答えるのではないかと思います(ワイ調べ)

判例は、捜索差押に伴う写真撮影を、事案との関係によりますが、捜索差押令状に付随する効力により説明していたかと思います。それゆえ、令状主義の問題であると答えるのかもしれません。

 

 

では、強制処分法定主義はクリアしているのであれば、その「特別の定」はどこに求めればよいのでしょうか。ここで、表題の問いにつながります。

写真撮影が「検証」であれば、当然「検証」の根拠規定が「特別の定」になろうかと思います。しかし、そうであれば、捜索差押に伴う写真撮影は検証令状が必要になるのではないでしょうか。

この点、捜索差押がなされるのであれば、検証による法益侵害が既に包含されているとして、別途検証令状は不要なのだ、というような反論があるのかもしれません。

なるほどそうなのかもと思う反面、冒頭で若干述べた、写真撮影には「検証たる性質」がある場合や、「捜索たる性質」「押収たる性質」の場合がある、というような話が無意味になるのではないでしょうか。また、法が類型的に捜索差押と検証を別途規定したことと正面から抵触することになる解釈論にはならないでしょうか。

 

ここでワイが言いたいのは、受験生おなじみの「写真撮影は検証たる性質を有する」ということと、「写真撮影は検証である」ということはイコールではないのではないかということです。

つまり、事案との関係で留保が必要な場合もありますが、「写真撮影は検証それ自体でなく、検証に「必要な処分」である」と理解しておきたいのです。

 

 

強制処分は、強制処分法定主義の要請ゆえ「特別の定」が刑訴法規内に必要な一方、任意処分であっても法律の留保原理から法律の根拠は必要であり、その根拠規定は197条1項になるかと思います。

そうすると、「必要な処分」として111条1項が規定されているのは、197条1項の任意処分として説明ができないような場合、つまり強制処分の場面が包含されていると思われます(鍵を壊すなどは強制処分性があるのではないでしょうか)。したがって、「必要な処分」を定めた111条1項などは、197条1項但書をうけた「特別の定」としての役割を有しうることになります。

(上記アイデア判例と抵触するかもしれませんが、判例の結論を捜索差押に伴う写真撮影を「必要な処分」として説明を組み替えることは可能かと思いますし、そうでなければ、強制処分性をどう考えているか定かでない判例の方がおかしくね、というのが私見となろうかとおもいます)

 

正直どうでもええやん、って言われるとまあそうなんですが、試験との関係では、もしかしたらそういう細かい部分は書かなくても良いとも思いますが、仮に書くのであれば、強制処分法定主義をクリアする際の条文摘示が「検証」それ自体の規定をあげるのかそれとも「必要な処分」を規定した111条1項をあげるのかが変わろうかと思います。

 

令状裁判官が審査し許可した侵害法益とことなるヤツを撮影するのはダメやで、って部分はそれこそ強制処分法定主義をクリアした後の、令状主義プロパーの問題として説明ができます。

また、「押収たる性質」や「捜索たる性質」を有する写真撮影も、押収それ自体や捜索それ自体ではなく、あくまでそれらに「必要な処分」として説明ができるかと思います(準抗告の可否についても然り)。

上記は捜索差押に伴う写真撮影を念頭に置きましたが、それ以外の、捜索差押を伴わない、しかし強制処分性が問題となるような態様で行われる写真撮影の場合も同様です。写真を撮る捜査官が、カメラを通さず、五感の作用を用いて行う対象の把握こそが検証であり、撮影それ自体は、その把握結果を保全するための「必要な処分」ということになります。

 

 

以上です。